所長のメッセージ
: 令和5年4月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一
憧れのメジャーリーグ
WBCの日本対メキシコ戦は、春分の日の午前中にテレビ放映されたので、部屋の片づけをしながら観戦した。佐々木投手の160キロ越えの速球にはしびれたが、メキシコに先制され劣勢が続いた。7回に、同点に追いついたが、また、8回に2点を追加され、もうだめかと思っていたら、最後の最後にあの村上(神)様の逆点サヨナラ打で、決勝へ進出。そして、本場アメリカのメジャーリーガーたちに臆することなく、14年ぶりの優勝である。野球の試合で興奮したのは、何年ぶりだろう。
WBCとはいいながら参加選手の多くはメジャーリーグに所属しているので、メジャーリーグ内での出身国別対抗戦という見方もある。それほど野球においてはメジャーリーグの存在が大きく、メジャーリーグは世界中の野球を志す人の憧れである。メジャーリーグチームとの親善試合やメジャーリーグのTV放映などで、日本のファンも多い。私も大学生のころ、世界最強のビッグ・レッド・マシンことシンシナティレッズの来日(1978年)に合わせた特集記事を読み、TV放映などで興味を持った。ピートローズ、ジョニーベンチ、ジョー・モーガン、ジョージ・フォスターなどの個性的な選手集団に魅せられた。週刊ベースボールに掲載されていた大リーグ特集記事を愛読していた。その中でメサースミス事件が大々的に特集されていたのを記憶している。調べてみると、ドジャースの投手メサースミスが1975年を未契約のままプレーし19勝をあげ、自由な身分であると主張して裁判となった事例で、フリーエージェント制度(6年以上メジャーリーグでプレーすれば、どの球団とも自由に交渉できる)が生まれるきっかけとなった事例だ。1880年代より球団、オーナーが有する権力として、保留規制というものがあった。保留規制は、球団が選手の賃金と労働条件を管理下に置き球団の許可なく他の球団に移ることができない‘奴隷規制’ともいわれていた規制です。これまでもたびたび訴訟となっていたが、その壁を打ち破ることはできなかったようです。メサースミス事件以降、この保留規制は廃棄、フリーエージェント制度が導入され、選手の年俸が高騰するようになった。その後、年俸高騰に対して球団側は対抗措置をとるなど、球団側と選手側との対立が激化し、1994-5年には、年俸の総額上限規制の問題で230日を超すプロスポーツ界で最長のストライキが発生した。メジャーリーグ存亡の危機と言われたが、この間メジャーリーガーの待遇改善はすすんでいったようだ。最近の労使交渉では、最低保証年俸が争点で、2022年70万ドル、2023年72万ドルと引き上げられている。尚、この労使交渉の基礎を作ったメジャーリーグ選手組合の初代委員長マービン・ミラーは、野球選手ではないが野球殿堂入りを果たしている。
メジャーリーガーの待遇改善の象徴として手厚いメジャーリーグ選手年金制度が知られている。引退後破産するメジャーリーガーが多かったことがその背景にあるといわれている。この年金制度は世界の野球選手がメジャーリーグに憧れる理由のひとつにもなっている。大谷選手の高校時代の夢は、WBCで優勝することとメジャーリーガーになりメジャーリーグ選手年金を満額もらうことだと紹介されている。
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