所長のメッセージ
: 令和5年12月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一
「外国人労働者」
◇外国人技能実習制度について、政府の有識者会議から、人材の確保と育成を目的とする
新たな制度を創設するとした最終報告書が11月24日に公表された。外国人技能実習制度は
外国人が最長で5年間働きながら技能を学ぶ制度だが、厳しい職場環境に置かれた実習生
の失踪が相次ぎ、人権問題も指摘されていた。国際貢献という目的と実態とのかい離が指
摘されてきた現在の制度を廃止するとした。新たに外国人材の確保と育成を目的に掲げた
制度を設けるとしている。
◇このニュースを聞いて、40年ほど前の人口学の権威であった重松俊夫教授よる「人口学」
の特別講義を思い出した。重松先生は鳥取大学医学部の助教授を経て福岡大学医学部の公衆
衛生学の教授に就任され、鳥取大学医学部の非常勤講師も務められていた。当時、私は鳥取
大学医学部公衆衛生学教室の助手として特別講義の補助をしていた。「人口学」の講義は格
調高く、その最新の知見は学生を魅了するのでした。わが国で少子高齢化が進めば、まず問
題となるのは労働力の不足であり、将来その対策の議論(定年延長、外国人労働者、移民政
策など)が必要になるだろうと述べられていた。その予想どおり我が国の労働力不足の問題
は水面下で進行していたが、女性の雇用促進、定年延長、日系人の活用に加えて、既存の制
度を利用した外国人技能実習制度で何とか対応してきた。さすがに、既存の制度では対応し
きれなくなったのだろう。今回のニュースは、新たな動きを予感させるものであった。
すでに、国立社会保障・人口問題研究所は、将来人口推計に基づく2070年の外国人労働者
依存度について労働者に占める外国人比率は2070年に 12.3%(現在1.2%程度)まで拡大し、
外国人が日本社会を下支えしていく構図が明確であると述べている。外国人労働者に対応す
る産業保健の構築が急務なのは間違いないようだ。