所長のメッセージ
: 令和6年6月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一
「労災事故3年連続増加、転倒予防対策が急務」
◇厚生労働省によると、仕事中の事故で4日以上休業した人は、13万5371人と前の年よりも
3016人増え、3年連続の増加となった。原因としては、転倒27%、災害性の腰痛16%が多か
った。その要因として高齢労働者の増加があげられる。65歳以上の労働者は過去10年で約
1.5倍に増加し、1千万人近い高齢労働者がわが国の産業を支えている。
◇そのため、高齢労働者が能力を発揮し、職場で事故なく安心して活躍できるよう「エイ
ジフレンドリーガイドライン」(厚労省 2020年)が定められた。このガイドラインでは、
転倒防止のため、照明確保、手すりの設置、段差の解消などの職場環境の改善に加え、高
齢労働者の健康や体力の状況の把握、体力づくりの取組などが提唱されている。体力の把
握では、2ステップテスト、閉眼片足立ちテストなど5種類の身体機能測定が提案されている。
◇ただ、これらの身体機能測定は、場所と時間と費用が必要であり、手軽に行えるわけで
はない。場所を必要とせず簡易に行える脚筋力評価・10回イス座り立ちテスト(長寿ネット、
公益法人財団長寿科学振興財団)が実用的ではないかと考えてる。脚筋力は全身の筋力と
の相関があり、脚筋力を測定することで筋力が十分であるか不足しているかの目安となる。
また、脚筋力は転倒のリスクとも関連している。この簡便な体力評価で「低下」と評価さ
れ、かつ週1回以上の定期的な運動をしていない場合にはプレフレイと判定してはどうかと
考えている。
◇1年前、隗より始めよということで、自分の体力測定を行った。10回椅子立ち上がりテス
トの結果は14秒で、想像した以上に時間がかかった。65歳∼69歳の基準値で「遅い」(脚筋
力「低下」)と評価され、運動習慣もないので自分自身をプレフレイルと判定した。当時、
体重が2㎏程度減少し、体脂肪が減ったと喜んでいたが、実際には足腰の筋肉が落ちていた
のだ。だらだらと座りっぱなしの生活だったことを反省した。早速、プレフレイル対策と
して運動を開始することにした。安価で単純な機能しかない自転車エルゴメーターを購入し、
テレビを見ながら走行距離1日3kmを目標に運動するようにした。現在10回椅子立ち上がり
テストのタイムは11.4秒「普通」と1年前より改善した。たしかに、つまずきそうになるこ
とが減ったような気がする。
◇