所長のメッセージ
: 令和6年7月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一
「1.20ショック」
◇6月5日厚生労働省は、2023年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計値)
が前年から0.06ポイント下がり、1.20だったと発表した。 記録のある1947年以降の最低を更新した。
出生数も72万7277人で過去最少を更新した。OECD加盟国間で合計特殊出生率を比較すると、日
本は38か国中35位と低かった。最下位38位は韓国であった。長時間労働の男性の割合が少ない
欧米諸国ほど出生率が高く、長時間労働の割合が多い日本や韓国は出生率が低い傾向がみられる
ので、長時間労働が低合計特殊出生率の一因と考えられている。我が国では、2019年の働き方改
革以降、総労働時間は減少傾向であるが、合計特殊出生率は上昇していない。
◇国内の都道府県の合計特殊出生率を比較すると、最も低かったのは、東京都で0.99と1を下回
った。次いで北海道が1.06、宮城県が1.07、秋田1.10、京都1.11だった。一方、最も高かったのは
沖縄県で1.60、次いで宮崎県と長崎県が1.49、鹿児島県1.48、熊本県1.47だった。合計特殊出生
率は、東京都をはじめとする大都市圏で低く、九州・沖縄の南日本で高い傾向がみられる。
都市部は、結婚や出産が遅い傾向があり、独身者が多いので出生率は低くなりやすいといわれる。
少子化対策の観点も含めて東京一極集中の是正が論議されて久しいが、一極集中は止まらない。
一方、出生率が高い地域は、昔ながらの子どもがたくさんいる地域の雰囲気・風土があるとい
われている。ただ、地域の雰囲気・風土を少子化対策の政策に生かすのはなかなかむつかしい。
◇世界人口デーの7月11日には、国連から2024年版の世界人口推計が公表された。今世紀中に世
界人口が減少に転ずると予測された。2022年版の報告書では、2080年代に約104億人でピークを
迎え今世紀末は横ばいと予想だったので、今回出生率がこれまでの想定以上に低下すると見込ま
れたようだ。この傾向は人為的環境負荷の減少という観点から評価されている。世界的視野でみ
ると、人口減少も歓迎されているのだ。少子化対策はむつかしい。