所長のメッセージ
: 令和6年12月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 黒沢 洋一
『マイコプラズマ肺炎』
◇8年ぶりにマイコプラズマ肺炎が大流行しています。マイコプラズマ肺炎はマイコプラズマ・
ニューモニエという細菌が原因の病気です。感染経路は主に咳やくしゃみによる飛沫感染と接
触感染で、患者は1~14歳に多く、家族内や学校、会社などでしばしば集団発生が起こります。
潜伏期間は感染後2~3週間程度である。初期症状として発熱や倦怠感、頭痛などが現れ、発症
後3~5日で咳の症状が出るようになります。咳は、次第に強くなり解熱後も3~4週間続き
ます。一般に、軽症で済みますが、一部の人は脳炎など重症化することもあります。
◇マイコプラズマは分類上細菌に属する微生物ですが、一般の細菌より小さく、細菌とウイル
スの中間のような性質を持つのが特徴です。マイコプラズマには細菌のもつ細胞を保護する外
壁がありません。そのため、細菌にあるこの壁を壊して細菌を殺す作用を有するペニシリン、
セフェム系などの代表的な抗菌薬は、マイコプラズマに対して全く効果がありません。マイコ
プラズマ肺炎では、通常の肺炎では用いられないマクロライド系抗菌薬が第一選択となります。
◇マイコプラズマ肺炎では罹患後の免疫は長くは維持されないので、3年~4年ごとに流行を繰
り返すようです。4年ごとに開催されるオリンピック開催年に流行することが多いので、俗称で
「オリンピック病」とも呼ばれています。前回流行した8年前の2016年は、リオデジャネイロ・
オリンピック・パラリンピックの年でした。その後新型コロナウイルス感染症が流行し、マスク
着用、手洗いの励行等、基本的な感染症対策が行われたためマイコプラズマ肺炎は流行しません
でした。昨年、新型コロナウイルス感染症が、5類感染症への移行に伴い、基本的な感染症対策
が緩和されたため、今年8年ぶりの大流行となったようです。今年は、パリ・オリンピック・パ
ラリンピックの年でもありました。ただ、マイコプラズマ肺炎流行とオリンピック・パラリンピ
ックが直接関係しているわけではなく、たまたま周期が一致しているだけと考えられています。
◇マイコプラズマ肺炎は、風邪に似た症状と咳のみの軽症で済むことが多いため、正確な診断が
なされないままに治癒している例も多いようです。私も、以前頑固な咳が続き、咳以外の症状が
ないので放置したが、2~3か月してようやく咳は収まった経験があります。ただ、睡眠や仕事
に若干の影響が出たと記憶しています。いつ頃であったか振り返ると、8年前の2016年でした。
今から考えると、マイコプラズマ肺炎だったかもしれません。受診していたら、もっと早く咳は
止まったのにと後悔しました。次回オリンピック・パラリンピックは、ロサンゼルスで2028年
開催予定です。2028年は、マイコプラズマ肺炎に要注意かもしれない。