所長のメッセージ
: 平成30年7月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之
健康な職業生活を永く送るためにいろいろな対策がとられています。
労働者が健康で働き続けるための健康管理の一つとして健康診断があります。これは主に医学的検査で、標準値(以前は基準値とか正常値と言っていた)を根拠に、この値の前後であれば通常の勤務をしても問題ないと判断します。この値から高い方や低い方に離れた結果が表れた場合に、程度によって保健指導をしたり、要精査、要医療と判定して医療機関の受診を勧めたりします。多くの場合は、標準値からかけ離れた値を示す労働者は少ないので、適切な保健指導を受け、職業生活を含めた生活管理をすることによって疾病状態になることを予防し、健康で就労を続けることが可能です。
今日では事業場で実施する健康診断項目に生活習慣病(がん、脳卒中、心臓病、糖尿病など)関連の項目が義務的あるいは任意に取り入れられているので、作業に起因する異常よりも老化や生活することによってもたらされる身体異常について判定し、指導することが多くなりました。
このことは、業務に起因する身体の異常よりも、加齢やいわゆる悪い生活習慣(喫煙、多量の飲酒、運動不足、ストレスの蓄積など)に起因すると思われる異常値に対する改善を考えた保健指導が重要になっているということです。
このため、現在では、労働時間の改善や作業環境の改善ということよりも、人として生きることによって必然的に起こる不健康状態を未然に予防し、さらに健康増進を目指す対策が必要ということになります。
つまり、職業生活に加え、日常の衣食住に関する生活指導も重要になっているということです。
その健康保持増進対策の一つとして運動することを勧めています。
運動は肥満防止のみならず、ストレス解消などの精神的活動にも効果があるという研究報告が沢山あるからです。スポーツや重労働は大量のエネルギーを消費するので身体活動量は多いのですが、スポーツはしばしば競技的要素があるため、より早く、より強くエネルギーを消費することと、競技スタイルが身体の一部分を偏って鍛えるため、筋肉の断裂や関節変形をおこしがちです。
また重労働は長時間同じ作業姿勢で同一の筋肉を使い続けるため腰や背中に疲労が蓄積し、その結果異常が起こります。
疲労回復には全身を均等に動かすラジオ体操や、ウォーキングやランニングによって適度に身体の筋肉をほぐす運動も良いでしょう。これらのことが無理なく、適切な身体活動量を維持することにより、また食事などのエネルギー摂取とのバランスをとることによって肥満防止と健全な体力を確保することが可能となるのです。
改めて運動の意味を考えていただき、肉体労働などで比較的エネルギーを消費している労働者であっても日常生活の中に運動を取り入れることを勧めます。