所長のメッセージ
: 令和元年7月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之
国会の委員会の質疑を聞いていると、年金の支給が困難になりそうであることと「生涯現役社会」という言葉が現実味をおびてきました。
年金問題は人口の高齢化(人口構成がつぼ型になった)により賦課方式を採用した年金制度の弱点が表面化して、国が掛け金として徴収し運用することで年金の財源を確保し続けると設定していましたが、資金運用がスムーズにいかなかったことや年金を掛けていなかった高齢世代に年金等として支払い資金をつかってしまったことにあります。また、人口(特に徴収対象となるであろう若年労働者層)がこれほど早く減少するとは予測していなかったことにも問題があります。更に、年金問題とは別に若い労働人口の減少は労働力不足をまねき、企業活動が困難になってきていますので定年後の高齢労働力の活用は必須の条件となっています。
2013年に人口構造の中で4人に1人が高齢者(65歳以上)となったため、高齢者が社会構造を維持し、持続性社会を活性化する重要な役割を担うようになってきています。そのため定年後も就労する高齢者が急増し、若年労働者と再雇用された高齢労働者がバランス良く活躍する社会をどのように構築するかが昨今の課題となってきていますが未だ未整備のままであることが懸念されます。
日本の年金制度自体を維持することは可能と思いますが、「終身雇用体制」が崩壊した影響で、将来の年金については安心して生活できる金額が確保されるのかどうか、あやしくなってきました。
このため自助努力や自己責任で定年後も労働を続け、自分自身でそれぞれの生活水準を維持することの必要性が政府より公表されるようになりました。それには現役の時から定年後も働き続けられる健康と体力を維持しておくことが前提となります。
これまで、「在職中」を基本としていた産業保健の健康管理の在り方は、定年後も就労を続ける現在においては、根本から見直す必要があります。今日の「働き方改革」は、働く人が個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を自分で選択できることを目指しており、ややもすると現役の若い労働者のみの就労条件の改革と考えられていますが、60・70歳代の高齢労働者の就労を可能とする改革も盛り込まれることが望まれます。
現役の労働者の70%が中小企業・小規模事業所で働いている現況の中で、資金力が少ない中小企業に、社会問題を自ら受けとめて対策を講じることは難しいと思われますので、社会全体で、更なる「新しい働き方改革」を構築することが急がれます。