所長のメッセージ
: 令和元年11月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之
今度の働き方改革関連法の施行により、各企業では今までの働き方を見直すことと、働き方を変えることを推進しなければならなくなりました。働き方改革の基本的な考え方は、働く人々が、「個々の事情」に応じた多様な働き方を、「自分で選択」できるようにするための改革です。
現状の労働法制では、正規雇用者の解雇規制が厳しく、雇用調整(解雇など)が難しくなっているため、大企業(派遣先)は正社員の採用を控え、下請けの派遣会社より労働者を派遣社員(非常勤が多い)として受け入れるようになっていました。今まで、派遣元事業主は派遣労働者を派遣先の正規労働者と比較して基本給等の待遇を低く扱っていましたが、この改革により、不合理な待遇で働かせることが禁止され、適切に処理しなければならなくなりました。
改正のポイントの主なものの一つに、長時間労働の是正があります。その内容は、時間外労働(いわゆる残業のこと)の上限を月45時間、年360時間(約1日2時間残業)を原則としましたが、例外として現時点では、自動車運転業務、建設事業、医師などは猶予期間を設けたうえで、また研究開発業務は規制の適用が除外されました。
基本的に、労働基準法では労働時間は1日8時間としているものの、使用者が労働組合又は労働者の過半数代表者との書面による協定により、その協定の範囲内で時間外労働が可能となっています。今回の改革の趣旨は、労働人口の減少等により、やむを得ず労働力不足を補うための制度であったのですが、注視しなくてはならないことは、やむを得ない事情がある場合に活用されるはずの時間外労働の上限規制が、労働者の採用当初より条件に組み込まれて、就業機会の拡大や一人一人のより良い将来展望のもてる処遇ではなく、労働強化に繋がりかねなくなっていることです。
事業主は、いわゆる残業を減らす努力をする必要があるため、自社で処理できない業務量の受注や、無理な納期の受注をしないようにすることや、労働者数に余裕をもった経営努力が求められることなどを理解しておかなければなりません。
また、労働時間のことだけではなく、通勤に長時間を要する労働者の疲労等が発生しないように配慮した就労体制をとる必要もあります。
勤務時間インターバル制の導入にあたっても、労働者の生活時間や睡眠時間を確保するために、前日遅くまで残業したのであれば翌日の始業時間を遅くするなど、柔軟な勤務時間制度をとることが必要です。
裁量労働制の導入にあたっては、業務量が過大である場合(高い成果を求める)や期限の設定(決められた期間に結果を出す)が不適切である場合には、労働者自ら時間配分をする裁量が事実上失われる事があります。裁量労働制の導入の趣旨に適合した適正な導入と運用が事業者に求められます。
このように今回の働き方改革の実際の導入にあたっては、労働者はもちろんのこと事業主も改革の趣旨を理解したうえで推進しなければ改革は実現できないと思われます。快適労働環境を実現するため、頑張りましょう。