所長のメッセージ
: 令和元年12月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之
いよいよ今月で令和元年の最後の月となりました。
今年は産業保健行政の改革の目玉として4月1日に「働き方改革関連法」が施行されました。
いくつかの注目すべき内容がありますが、そのなかであまり話題にならない内容に「産業医・産業保健機能の強化」があります。
これは「産業医」という資格をもった医師の存在があまり知られていないのが、その理由の一つと思われます。今回の安衛法の改正では産業医に関する規定が整備され、事業主に産業医の業務内容を従業員に周知させる義務を新たに設けました。そこで事業主や労働者のみなさんに知ってもらう必要があるため、産業医関連の内容を解説します。
まず、医師は医師国家試験に合格すると医師免許が与えられ、独占的にすべての医業を行うことが可能となります。
免許取得により、全ての診療科(内科、外科、産婦人科、眼科、耳鼻科、整形外科、放射線科など)の診療や治療行為を行うことができます。
しかし、医学部在学中には免許がありませんので、卒業後の免許取得後でなければ、注射、手術などのいわゆる医療行為は出来ず、そのため免許取得後は、最低2年以上の臨床研修を行ってからはじめて一人前の医療行為が可能となります。
ですが、あらゆる診療科の診断・治療などの診療技術を身につけるためには長年を要しますので、多くの診療科のうちから自分が選択した診療科名を標榜して診療にあたります。その診療科名を標榜をするために特に資格要件はありませんので、どの医師でも内科医であったり、外科医を名乗れます。言いかえれば、内科医が整形外科医や眼科の治療をしても何も問題はありません。
次に産業医についてですが、産業医になるには「事業場において(医療機関内のみでない)労働者の健康管理等を行う産業医の専門性を確保するため」労働安全衛生法第13条に、医師であることに加えて、「労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について労働省令で定める一定の要件を備えたものでなければならない」と規定されています。
一定の要件とは、次のように規定されています。
①労働者の健康管理等の知識に関する研修を修了した者
②大学において労働衛生に関する科目の教育を担当した教員
③その他厚生労働大臣が定めた者
(①の研修については、日本医師会の行う産業医学基礎研修や産業医科大学で行われる産業医学基本講座の受講等があります)
つまり産業医の多くは、医師免許取得後に日本医師会の行う「産業医学基礎研修」により産業保健の知識を習得して産業医としての資格を有することになります。
そして、労働安全衛生法第13条に労働者が50人以上の事業場では、産業医を選任することが事業主に義務づけられているため、今回の改革によって、産業医の存在と職務について改めて認識する必要が出てきました。
「産業医」への理解を深めていただくため、まず、産業医の資格要件などを解説いたしました。次回(令和2年1月の所長のメッセージ)は、産業医の職務等について解説いたします。