所長のメッセージ
: 令和2年11月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之
労働力人口(15歳以上の人口、就業者と完全失業者の合計)は、令和元年で6,886万人となり、前年より56万人増加しています。日本の人口構成は、年少人口(0歳~14歳)が減少し、生産年齢人口割合(15歳~64歳)も令和元年で59.5%と年々減少し、老年人口(65歳以上)だけが年々増加しています。そして、労働力人口比率(15歳以上の人口に占める労働力人口の割合)は働く老齢人口が増加しているので、令和元年で62.1%と毎年増加しています。これはいわゆる定年後も高齢労働者が現役として健康を維持しつつ、労働しているということです。さらに、これからも高齢労働者を活用していかなくては日本の産業は維持できなくなることのあらわれでもあります。
AIや産業ロボットを生産ラインに設置、活用して今後の労働者不足を解消することも実施され、また外国人労働者を技能実習生として日本国内に受け入れ、活用して労働力不足を補うことも実践されていますが、受け入れ後の体制が不備のため限界が見えてきました。質の良い日本人労働力を活用することが見直され、定年制度を見直すか、高年齢者の再雇用による活用対策が実践されています。
IT化やロボット技術が導入され労働形態の改革が行われていますが、それでもなお人間の技能に頼らなければならない作業が多くあるので、今後も人間の労働者が必要であります。
人間の労働従事年齢の延伸が必要ですが、人間は歳をとり身体老化がおこることは必然なので、身体機能を可能な限り継続して維持することが必要となり、これを目指した産業保健活動が行われなくてはならなくなりました。
今までの健康管理は、身体臓器の老化に着目し、生活習慣病も心血管疾患、糖尿病、がんなどの疾患予防対策を行ってきました。今後は、身体機能を活用した労働が継続できるような、手、足などの運動器官の健全な維持に注目した健康管理活動が必要であります。
身体の運動器官の構成要素には、①身体を支える骨格 ②骨と骨を連結し衝撃を吸収する部分である関節や脊椎の椎間板 ③身体の機能を制動する筋肉 ④筋肉をバランス良く動かす信号を送る神経系があります。人の運動器官は、出生時は未熟であるが発達を経て成熟していきます。運動器官が正常に発達するには機械的刺激(メカニカルストレス)が適正にかかることが必要であり、その刺激が過剰でも不足でも正常な動きを可能にすることはできません。よって高齢者になっても恒常性を維持するためには、体力チェックを実施し、身体機能を認知し、体力低下を補う健康づくり活動が必要となります。
運動機能を健全に保つことによって、令和2年に公表された「エイジフレンドリーガイドライン」の主旨が実行可能になります。