所長のメッセージ
: 令和3年7月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之
◆令和2年(2020年)4月より働き方改革関連法が施行されました。働き方改革の目指すものは、働く人々が個人の事情に応じた多様で柔軟な働き方を「自分で選択」できるようにすることです。これは日本古来の労働する価値観を変える(不要で古めかしい考えを見直し、我々みんなが新しい価値観を受け入れる)ことを意味しています。
◆日本は天然資源が乏しく、原料のほとんどを輸入に頼り、ものづくりを経済の主力として資本主義経済体制を発展させてきました。そのため労働者は年中休みをとらないで無休で勤勉、実直を働くことを美徳としてきました。また、精密で壊れない良い製品をつくることを日本人の正常な生産価値であると受け入れています。このことはちなみに世間では夫とするのは勤勉な青年(身長が高く、学歴が高く、給料が高い、いわゆる3高の若者)、そして嫁としてめとるのは実直な娘(誠実で正直、慎ましい女性)が良いとする風潮がつくられてきました。また、まじめな良い会社員は始業10分前には机につき、始業時間になると朝礼のために全員が起立して上司の仕事の方針等を聴き、昼食は決まった時間に食べ、休憩時間には健康のために体操をさせられ、ライン作業であれば定時に出勤、退社し、ホワイトカラーや職人であれば労働時間にしばられることなく働くことを経営者は良とし、ややもすると結果を出すことも大切だが、苦労を重ね努力している人は決して批判されない風土がありました。
◆このことを変えるため、働き方改革では長時間労働の上限規制により残業を削減する、年次有給休暇を確実に取得する(年中無休で働く者をなくする)、フレックスタイム制を拡充して就業開始が異なった勤務体制をとる、勤務間インターバル制度の導入により休息時間を確保する、テレワークや変形労働時間制の導入により弾力的な働き方を可能とし、労働時間にとらわれるのではなく結果の評価としての成果主義がとり入れられつつあります。
そして、「ダイバーシティ」や「自由な働き方」の考えのもと、連鎖反応として勤務の服装が制服でなくなり、女子社員のお茶の給仕がなくなり、マイボトルの持ち込みや席の自由化がすすむなど新しい職場の空気がただよい始めています。
しかし、いまだに成果を残しても、就業時間を守り勤勉実直を良とする同僚や周囲の者は、遅刻や早退する者に対して納得するだけの理由(発熱などの病気になった)の提出を求めているのも現実です。
◆コロナ感染については、今までの感染症研究により、新しい感染症は2~3年でパンデミックは終息すると考えられていますので、いずれは収まると思います。
◆そして、ポストコロナは働き方改革がさらに進行すると思われます。経営者、労働者も、古い労働体制や産業構造にもどると信じるのではなく、もう二度と昔の体制にはもどらないと理解しておくことが大切です。