所長のメッセージ
: 令和3年9月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之
◇新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、ワクチン接種を事業場で行うことが大企業を中心に実施されています。事業場で従業員にワクチンを接種することは、労働者の健康問題に係ることですので安全衛生委員会等で審議し、事業主の責任で接種することになります。事業主は産業保健の目的を達成するため、ワクチン接種の意義や効果などを適切に理解し、今までの職場での感染症対策(ウイルス肝炎、エイズ、インフルエンザなど)を参考に検討する必要があります。
◇今回使用されているワクチンは遺伝子(m-RNA)を活用した新しいタイプのワクチンであり、臨床試験なども不十分であり、今まで日本で承認されているものと異なりますので、有効性(人体の筋肉細胞内で産生されたウイルススパイク蛋白の安全性、中和抗体の特異性の有無、そして抗体の持続期間など)やワクチン接種後の副反応(発熱、疼痛、人体有害性など)の発生が明らかになっていません。
◇さらにもう一つの職域接種に係る問題は、事業主に依頼されて接種者不足のために産業医がワクチンを接種することです。産業医の任務(健康管理、健康診断、職場巡視など)は多岐にわたっていますが、通常は職場内に診療所を開設し、健康相談等に対応しているだけで直接医療行為はしていませんが、ワクチン接種は医療行為の内容に含まれます。嘱託産業医との産業医契約においても、ワクチン接種は産業医の任務に入っていないのが通常ですので、留意が必要です。
◇また、従業員にワクチン接種を勧め、みんなが接種したのでもう感染はしないと過信して、従業員の行動が3密(密集、密接、密閉)を怠るようになると、集団免疫が確立されているわけではないので、事業所内でのクラスター発生などにより社会全体での感染爆発がおこるかもしれません。
◇改正感染症法の内容は、産業保健対策とは必ずしも連動しているわけではありません。事業場におかれては、緊急事態宣言などで要請されている自粛、および働き方の工夫を行いながら、それぞれの職務を実施することが必要です。