所長のメッセージ
: 令和3年10月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之
人生100年時代に向けて高年齢労働者が安心、安全そして健康に働ける職場環境づくりや、労働災害防止を目ざして「60歳以上の高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」が公表されています。
具体的対策として、従来の「身体機能低下を補う設備、装置の導入」、「健康や体力の状況を日常的に把握する」、「高齢者の特性に注目した安全衛生教育」に加えて、今最も注目されている「新型コロナウイルス感染症予防」が追加されています。
これらは主として高年齢労働者を事業場に受け入れて、若い労働者と一緒に作業をスムーズに行うための対策を考えています。高年齢労働者が作業を遂行するためには、本人もそうですが、周囲の労働者が高年齢労働者の身体的特性に合わせて対応することや、それ以上に精神的特性を理解し、受け入れ、配慮しながら協同して働くことも重要であるからです。
高年齢労働者の早老の特性(初老期認知症といわれることもある)として、反応が遅くなる、複雑な組合せと判断をしながらの作業は不得意であることや、特に精神機能は軽度認知症が伴うので新しい作業の記憶が難しく、そのために予期せぬミスをくりかえすことなどが考えられます。
高年齢労働者の精神反応の特性としては気が短くなり、ささいなことに強く反応して攻撃的になりやすくなってきます。このことを本人も職場の同僚や上司も気がつかないまま大きなトラブルとなり、仕事に支障をきたすおそれがあります。高年齢労働者を受け入れることは、事業主や若い労働者に新しい視点を取り入れた対応を求めています。
企業の「働き方改革」においても、現役時代の労働環境のみに注目するのではなく、定年退職後の高年齢での再雇用労働者の受け入れも視野に入れた職場環境改善の検討が必要です。高年齢労働者の精神機能の低下に注目した新しい産業保健の研究と対策がポストコロナに一層発展することを期待します。