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所長のメッセージ

所長のメッセージ  : 令和3年12月によせて 

投稿日時:

鳥取産業保健総合支援センター 所長  能勢 隆之

 

新型コロナウイルス感染症の流行は、第6波の可能性が懸念されています(令和3年11月末現在)。新型コロナウイルスは、SARSのようにコロナウイルス株の変異などウイルス自体の原因によって感染力が変化することが推測され、第6波とともに感染流行が変異によって影響を受ける可能性もあります。しかしウイルスの感染形態が変化しても感染がなくなるわけではなく、今までのウイルス感染症(たとえばインフルエンザなど)と同様に流行を繰り返し発生し、いわゆる「ウイズコロナ時代」に移行していくことが予測されます。事業場としてはウイズコロナ時代に適した人材の確保や生産体制の再構築などの整備が急がれます。

ウイズコロナ状況下での企業継続計画(BCP)の推進のためには、産業保健として行われていた事業所内の感染症対策は今までとは異なる新しい展開を検討しなくてはなりません。今までのように産業保健スタッフが労働者の安全と健康の確保のみに注目していたのでは、経営の合理化などを重視する経営者側と目的観が異なり、トラブルが起こることが予測されます。改正労働安全衛生法では、労働者の長時間労働の抑制、また過労死や職場不適応によるメンタルヘルス不調、自殺などの発生を防止するため、産業医・産業保健職務の権限拡大やその職務内容が明示されました。コロナ禍で経営不振に陥ったことを改善するため、事業所では人員の解雇や経営の縮小を優先する取り組みが行われてきました。コロナ禍で「働き方改革」や労働者の健康保持・増進といった組織の健全性を高める「健康経営」の理念が軽視されがちなことが心配されます。

日本型の企業経営は終身雇用制、年功序列、企業内組合(労使協調主義)を3種の神器として行われてきました。これは良いところもありますが、稟議・集団主義・平等主義・現場主義・隠蔽などが重視され、労働者個人の健全性がややもすると無視され、緊急対応のためには労働強化もやむを得ないという企業体質が優先されることも考えられます。これらにより労働環境が悪化して健康障害やメンタルヘルス不調が発生しやすくなりますので、そのような状況を回避するため、働き方改革の推進に努めなければなりません。産業保健スタッフは、今回の新型コロナウイルス感染症の流行を教訓として、感染症が企業に発生したあるいは発生するおそれがある場合を想定した企業内危機管理の対処方法を具体的に検討しておくことが必要です。まず労働者の安全・健康確保を図りつつ、産業保健分野のスタッフも積極的に企業のBCPに参加する考えと十分な知識を醸成しておくことが重要です。