所長のメッセージ
: 令和4年3月によせて
鳥取産業保健総合支援センター 所長 能勢 隆之
長時間労働(過重労働)の是正や非正規雇用労働者などの待遇改善を柱とした働き方改革関連法(主な関係法律の8本が改正された)が順次施行されています。鳥取県では中小企業が多いため企業内の体制装備が遅れている企業が多くあります。その上にコロナ感染拡大で経営に大きく影響された企業が多いので、ポストコロナでは改革どころではなくなることが予測されています。
この働き方改革では、労働基準法や労働安全衛生法などを基に、労働の近代化や多様化などに合わせた労働条件や職場環境の整備が求められています。過去の日本の労働者の採用は、一般的には学校の新卒者を一括採用することが普通で、これは就職ではなく就社であり、企業の一員となりゼネラリスト(一般職)として企業の業務を全般的に経験しながら昇給、昇進し、一定年齢まで働くと定年により退職していました(終身雇用制)。
今回の改正は、このように多様な労働環境で働く中での改革であり、その目的は「豊かで安心できる社会・健全で活力ある経営を実現するため、働く人々が健全に能力を発揮し、安心して働ける労働条件や労働環境の整備」を目指すものです。主な改正ポイントは、①今までの長時間労働を美徳とする体制の是正(残業時間の上限規制など)、②勤務間インターバル制度の普及(前日の勤務の終了後から翌日の出社までに一定時間以上のインターバルをとり、充分な睡眠と豊かな生活がおくれるようにする)、③雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(パート・有期雇用者に関する同一企業内での正規雇用者と不合理な待遇の禁止)などであります。しかし、社会は長くつづいた経済政策の失敗やコロナ禍も加わり、適切な体制を維持することが困難であり、大企業では業務の縮小による自社労働者の他社への出向、労働時間の制限、リモートワーク後の自主退職の勧告などが進み、中小企業では非正規労働者を中心とした雇い止め、アルバイトの縮小など、労働者を取り巻く労働環境が悪化しています。また、これを機に主に若い世代の労働者が就職前に考えていた会社イメージ、職務内容とのギャップやパワハラによるメンタル不調で転職の希望者が急増しています。
働き方改革を実践するためには従来の採用方法や人事管理(親方日の丸的我慢を強いる人事異動)などをまず改革する必要があります。これからは欧米型のジョブ型採用など日本的でない採用や期限付き人事異動も視野に入れた会社経営のあり方を労使協調して検討する時期に来ていると思います。